5月。山の空気は柔らかさを帯び、あたたかな太陽の光が、厳しい冬を越した山の動物たちを安堵させる。今年は暖かいせいか、山小屋のまわりにはもう雪は見あたらない。この時期の風景は、茶色くくすんだ枯草と、その合間から顔を出す黄緑色の新芽たちが作り出している。

木々に新芽、所どころに山桜がまじる。

山小屋わきの階段。まだ緑はさみしい。

所どころに新芽がはえる。

 

山の雪どけ水を運ぶあの沢へ足を向ける。

やはり、今年はまったく雪が見あたらない。沢には、冬のあいだ雪に隠れていた秋の落ち葉がごそっと溜まって、水の流れを変化させている。

雪はもう見あたらない。

雪どけ水をはこぶ。

雪の下に隠れていた落ち葉たちが流されてきて溜まる。

 

この辺りのこうした小さな沢たちは、それぞれが雨水や雪どけ水を運び、少し下流で集まって、小沢根川となる。

小沢根川は、八ヶ岳の北麓にあり、千曲水系である。
山間を流れる渓流らしく、苔の生えた大きな岩たちがゴロゴロと転がって、硬い岩盤に打ちつけられた水は白く泡立っている。

山間の渓流らしく流れがはやい。

大きな岩盤の上を流れる。

川のほとりにタンポポ。

山に落ちた小さな雨粒が少しずつ集まり、やがて名もない沢となり、沢が集まり小沢根川となる。小沢根川はまた隣り合う渓谷の川と合わさって武石川となる。さらに川たちは集まり依田川に。そしてついに千曲川という大河へそそぐ。

私は分水嶺好きの川ラーだが、どちらかというと分水嶺そのものよりも、こうして一人の雨粒ちゃんが、仲間たちと出会い、どんな旅をして母なる海へ戻っていくのか。その物語にたまらなく愛しさを感じる。

特に水源に近く、流れの荒々しい山間の沢や小川は、雨粒ちゃんたちが「急げ急げ、おうちに帰らなくちゃ」と言って必死に集まってくるような感じがして、ついつい応援したくなってしまうのだ。

渓流と山桜

山桜

川辺にはいたるところにこごみが生える。

川ラーの中でも渓流ファンは、こうした山間の豊かな自然や、荒々しい流れを好んで訪れる。もちろんその中には渓流釣りをされる方々も多くいる。

夏になれば、イワナなどを目当てその姿を見かけるが、今は川に入る人の姿はほとんどない。川沿いには山桜が咲き、こごみがニョキニョキと顔を出し、鳥たちが遊び、命あふれる季節の到来を教えてくれている。